AIによるDXとは、AI(人工知能)を活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する取り組みを指します。AIツールを導入したものの、業務改善や事業変革にまで届かず、PoC(概念実証)の段階で止まってしまう企業も少なくありません。
本記事では、AIによるDXの基本的な考え方から実現できること、直面しやすい課題、成功させるための進め方までを、DX推進を担当する企業のご担当者に向けて解説します。自社のDX推進の参考にしてください。
AIによるDXとは
AIによるDXという言い方は、業界で正式に定義された用語ではなく、AIを活用してDXを推進する取り組みを指す表現です。
経済産業省は「デジタルガバナンス・コード2.0」のなかで、DXを競争優位の確立につながる経営変革と位置づけています。単なるデジタル化ではなく、データやデジタル技術を土台に製品・サービス・ビジネスモデル、さらには組織や企業文化までを変える取り組みという点がポイントです。
一方、AI(人工知能)は、人間がおこなう判断や学習、認識といった知的な処理をコンピュータに担わせる技術の総称です。画像認識や自然言語処理、機械学習など、扱う分野によって得意・不得意が分かれます。
DXとAIの関係を整理すると、DXが「目的」、AIはその実現を支える「手段」の一つという位置づけになります。AIを導入しただけでは、業務やビジネスモデルの変革という成果に結びつかない場合もあるため、AI導入そのものを目的化しないことが重要です。
開発費用シミュレーター
3ステップで概算費用をすぐに確認できます
① 開発の種類
② 規模・機能数の目安
③ 希望納期・チーム規模
概算費用(税抜)
¥30万〜
目安レンジ:¥24万〜¥40万
※本シミュレーターは概算の目安です。実際の費用はヒアリング後にご提示します。
AIによるDXで実現できること
AIをDXに活用することで、業務効率化から新たな価値創出まで幅広い効果が期待できます。ここでは、代表的な3つの効果を紹介します。
- 業務の自動化・省力化
- データに基づく意思決定の高度化
- 顧客体験(CX)の向上と新規価値創出
業務の自動化・省力化
業務の自動化・省力化は、AIをDXに活用する際にもっとも効果を実感しやすい領域です。AI-OCRによる帳票のデータ化や、画像認識による検品・仕分け、問い合わせ内容の自動分類などにより、これまで人手に頼っていた作業の負担を減らせます。
たとえば、紙の請求書をAI-OCRで読み取りシステムへ自動連携すれば、手入力の手間と入力ミスの両方を減らせます。定型業務から手が離れた分のリソースを、企画や顧客対応など付加価値の高い業務に振り向けられる点もメリットです。
データに基づく意思決定の高度化
データに基づく意思決定の高度化も、AI活用がDXにもたらす効果のひとつです。人の手では処理しきれない量のデータをAIが高速に分析することで、需要予測や在庫最適化、異常検知などの精度を高められます。
たとえば、過去の販売実績や天候、イベント情報などをAIに学習させれば、経験や勘に頼っていた発注量の判断を、データにもとづいて調整できるようになります。BIツールと組み合わせて分析結果を現場から経営層まで共有すれば、データドリブンな意思決定文化が根づきやすくなる点も利点です。
顧客体験(CX)の向上と新規価値創出
顧客体験(CX)の向上と新規価値創出は、AI活用がDXにもたらす3つ目の効果です。24時間対応のチャットボットや、購買履歴にもとづくレコメンド機能などにより、これまでにない顧客体験を設計できます。
また、AIによる分析から得た知見をもとに、既存事業では扱っていなかった新しいサービスを立ち上げる動きも広がっています。顧客への提供価値を起点に発想することが、AI導入の目的化を防ぐポイントです。
AIを活用したDX推進で直面しやすい課題
AIを活用したDX推進では、技術面よりも計画や体制の不備でつまずくケースが目立ちます。ここでは、代表的な3つの課題を紹介します。
- 目的が曖昧なままPoCで止まる
- データが整備されていない
- AI人材が不足し、内製が進まない
目的が曖昧なままPoCで止まる
目的が曖昧なままの導入は、AIを活用したDX推進でもっとも多い失敗パターンです。「AIで何かできないか」という発想だけで始めると、検証すべき指標が定まらず、PoC(概念実証)の段階で止まってしまいます。
たとえば、「業務を改善する」という曖昧な目標ではなく、「検品作業の精度を98%まで高める」のように、具体的で測定可能な目標を設定する必要があります。目的を数値で定義できれば、導入すべきAIの種類や範囲も自然と絞り込める点がメリットです。
データが整備されていない
データが整備されていない状態は、AIの精度を左右する大きな課題です。AIは学習データの質と量に性能が左右されるため、部門ごとにデータが分散していたり、形式がバラバラだったりすると、十分な効果を発揮できません。
また、正常なデータに比べて異常データが不足しがちな点にも注意が必要です。自社にデータが十分にない場合は、収集や蓄積からデータの標準化までを含めて、時間をかけて整備する計画を立てましょう。
AI人材が不足し、内製が進まない
AI人材が不足し、内製が進まないことも、AIを活用したDX推進で企業がよくつまずく課題です。データサイエンティストやAIエンジニアの採用競争は激しく、育成にも時間がかかるため、自社だけで体制を整えるのは容易ではありません。
経済産業省の調査では、2030年に先端IT人材を含むIT人材が最大79万人不足すると試算されており、なかでもAIやビッグデータを活用できる人材の不足はすでに顕在化しています。この課題への向き合い方は、次章で詳しく解説します。
AIを活用したDX推進を成功させるための進め方
AIを活用したDX推進を軌道に乗せるには、計画と体制の両面を押さえる必要があります。ここでは、企業が取り組むべき3つのポイントを紹介します。
- 目的とKPIを明確にしてスモールスタートで進める
- データ基盤を整備する
- AI人材は採用・育成と外部パートナー活用を組み合わせて確保する
目的とKPIを明確にしてスモールスタートで進める
目的とKPIを明確にすることは、AIを活用したDX推進の出発点です。「AIで何を、どこまで改善するのか」を数値目標として定義しておけば、投資対効果を客観的に評価しながら進められます。
そのうえで、全社への一斉導入ではなく、1つの部署や1つの業務に絞ったスモールスタートで進めましょう。限定された範囲で効果を検証してから対象を広げれば、想定外の問題が起きた場合の影響も抑えられます。
データ基盤を整備する
データ基盤の整備は、AIの精度を引き出すための重要な準備です。複数のシステムに散らばった顧客データや業務データ、センサーデータをクラウド上のデータレイクなどに集約すれば、AIが学習しやすい環境を用意できます。
あわせて、既存の基幹システムやSaaSとの連携方法、セキュリティやアクセス権限の設計もまとめて検討しておきましょう。工程ごとにAIをどう使い分けるかは、「システム開発のAI活用とは?工程別の向き不向きと発注時の判断軸を解説」で詳しく解説しています。
AI人材は採用・育成と外部パートナー活用を組み合わせて確保する
AI人材の確保は、採用・育成と外部パートナー活用を組み合わせて進めるのが現実的です。AI人材を中途採用や社内育成だけでまかなおうとすると、時間とコストの両面で自社の負担が大きくなりすぎる場合があります。
外部パートナーに完全に依存すると、コストが増大するだけでなく、社内にノウハウが蓄積しにくくなる点には注意してください。初期のプロジェクトは外部パートナーと一緒に立ち上げ、その過程で社内の中心メンバーを育てていく伴走型の進め方が向いています。
3つの選択肢を整理すると、以下のとおりです。
| 観点 | 自社で採用・育成 | 外部パートナー活用 | 併用(伴走型) |
| 立ち上げの速さ | 育成期間が必要 | 早い(即戦力) | 中間(伴走しながら立ち上げ) |
| 必要な投資 | 採用・研修コスト | 委託費用 | 委託費用と育成費用の両方 |
| 社内ノウハウの蓄積 | 蓄積しやすい | 蓄積しにくい | 蓄積しながら進められる |
| 向いている企業 | 長期的に内製力を強化したい企業 | 早期に成果を出したい企業 | 内製化を見据えつつ早期着手したい企業 |
自社の状況に応じて、これら3つの選択肢を組み合わせながらAI人材を確保しましょう。
AIによるDXに関するよくある質問
AIによるDXについて、企業のご担当者からよく寄せられる質問をまとめました。自社で検討する際の材料としてお役立てください。
AIによるDXとDXの違いは何ですか
AIによるDXとDXそのものに、明確な境界線があるわけではありません。DXはデータとデジタル技術を活用した経営変革全体を指し、AIはその実現を支える技術の一つです。IoTやクラウドなど他の技術を中心に進めるDXもあり、AIの活用はその選択肢の一つと捉えると理解しやすくなります。
AI人材がいなくてもAIによるDXは始められますか
AI人材が社内にいない状態でも、外部パートナーと組めばAIによるDXを始められます。自社に知見がない段階では、まず外部パートナーと一緒にプロジェクトを立ち上げ、並行して社内の担当者を育成していく進め方が現実的です。将来的な内製化を見据えるなら、育成の計画も初期段階から組み込んでおきましょう。
AIによるDXは中小企業でも実現できますか
AIによるDXは、中小企業でも実現できます。チャットボットの導入や、生成AIを使った資料作成の効率化など、小さな範囲から始められる活用方法も多くあります。全社的な変革を急ぐ前に、身近な業務から着手し、成功体験を積み重ねていく進め方がおすすめです。
まとめ
AIによるDXとは、AIを活用してDXを推進する取り組みであり、DXが目的、AIはその実現を支える手段の一つという関係にあります。AIを導入するだけでは、業務やビジネスモデルの変革という成果には直結しません。
AIの活用によって、業務の自動化や意思決定の高度化、顧客体験の向上といった効果が期待できる一方、目的の曖昧さやデータ整備の遅れ、AI人材の不足といった課題も存在します。目的とKPIを明確にしたスモールスタート、データ基盤の整備、そして採用・育成と外部パートナー活用を組み合わせた人材確保が、これらの課題を乗り越えるポイントです。
自社の状況に合わせて、できるところから段階的にAI活用を広げながら、AIによるDXをかなえましょう。
