業務効率化やDX推進の一環として、システム開発を検討する企業が増えています。
しかし、社内にIT人材がいない、開発経験がないといった理由から、外注すべきか内製すべきか判断に迷うケースも少なくありません。
外注には専門技術を即座に活用できるメリットがある一方、コミュニケーションコストやノウハウ蓄積の課題も存在します。
本記事では、システム開発における外注と内製の違いから、メリット・デメリット、費用の目安、成功させるポイントまで解説します。自社に最適な開発体制を検討する際の参考にしてください。
目次
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システム開発における外注と内製の違い
外注とは、システム開発を自社以外の開発会社に依頼することです。一方、内製とは社内のエンジニアが主体となって開発する方法であり、柔軟な対応が可能になります。両者の違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 外注 | 内製 |
| 開発主体 | 外部の開発会社 | 自社のエンジニア |
| 初期コスト | 比較的高い | 人材確保・育成に費用が必要 |
| 技術力 | 専門スキルを即座に活用可能 | 社内の技術レベルに依存 |
| 開発スピード | 専門チームによる迅速な対応 | リソース状況により変動 |
| ノウハウ蓄積 | 社内に蓄積されにくい | 社内に蓄積される |
| 柔軟性 | 契約範囲内での対応 | 仕様変更に柔軟に対応可能 |
どちらを選んでもシステムは完成しますが、メリット・デメリットが異なるため、自社の状況に応じた判断が求められます。
システム開発を外注するメリット
システム開発の外注は、特にIT人材が不足している企業にとって有効な選択肢です。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介します。
- 専門的な技術力を即座に活用できる
- 採用・育成コストを削減できる
- 社内リソースをコア業務に集中できる
- スケジュール通りの開発が期待できる
専門的な技術力を即座に活用できる
開発会社には、さまざまなプロジェクトを経験したエンジニアが在籍しており、最新の技術トレンドを熟知しています。自社で技術者を育成するには数年単位の時間が必要ですが、外注であれば契約後すぐに高度な開発をスタートできます。
また、Web開発、モバイルアプリ、クラウド構築など、特定分野に特化したスペシャリストに依頼すれば、自社では実現が難しい高品質なシステム構築も可能です。技術選定や設計の段階から専門家の知見を取り入れることで、将来の拡張性や保守性を考慮したシステムを構築できます。
採用・育成コストを削減できる
システム開発を内製する場合、エンジニアの採用から教育まで多大なコストと時間を要します。近年はIT人材の採用市場が激化しており、優秀なエンジニアの確保は容易ではありません。
外注を活用すれば、採用・育成コストを削減でき、プロジェクト規模に応じた必要なリソースだけを確保できます。開発終了後の雇用維持の課題も回避可能です。繁忙期には人員を増やし、閑散期には縮小するといった柔軟なリソース調整ができるため、固定費を抑えながら開発を進められます。
社内リソースをコア業務に集中できる
自社でシステム開発を行う場合、開発に携わる従業員は他の業務に関われず、全体の業務効率が低下するリスクがあります。特に中小企業では、少ない人員でさまざまな業務をカバーしているケースが多く、開発プロジェクトへの人員配置が大きな負担となりがちです。
外注を活用すれば、社内リソースを営業や企画などのコア業務に振り向けられ、企業全体の生産性向上につながります。システム開発という一時的なプロジェクトのために社内体制を大きく変える必要がなく、本業に集中しながらシステム構築を進められる点は大きなメリットです。
スケジュール通りの開発が期待できる
外注先の開発会社は、確立された開発プロセスやプロジェクト管理ツールを保有しており、スケジュール管理・品質管理の体制が整っています。過去の開発実績に基づいた工数見積もりができるため、現実的なスケジュールを立てやすいのも特徴です。
自社で初めてシステム開発に取り組む場合と比較すると、納期遵守の確度が高く、計画通りのリリースが期待できます。請負契約であれば、納品物に不具合があった場合の無償修正も依頼可能です。事業計画に合わせたシステムリリースを実現しやすい点は、外注の大きな強みといえます。
システム開発を外注するデメリット
外注にはメリットがある一方、注意すべきデメリットも存在します。事前に理解し、適切に対処しましょう。
- 自社にノウハウが蓄積されにくい
- コミュニケーションコストが発生する
- 想定外のコスト増加リスクがある
自社にノウハウが蓄積されにくい
開発プロセスの詳細やシステムへの深い理解は外注先が主導するため、社内メンバーには十分に共有されないケースが多く見られます。技術的な意思決定の背景や、なぜその設計になったのかといった知識は、外注先に依存しがちです。
その結果、プロジェクト終了後のメンテナンスや追加開発の際に、再度外注せざるを得ない状況に陥りかねません。ドキュメント整備が不十分だと、システムがブラックボックス化するリスクもあります。長期的な運用を見据えるなら、開発段階から社内メンバーが積極的に関与し、知識の移転を図ることが重要です。
コミュニケーションコストが発生する
開発会社は自社の業務内容や課題を十分に把握していないため、認識の齟齬が生じやすく、想定と異なるシステムが納品されるリスクがあります。業務フローや社内ルールなど、暗黙知として存在する情報を正確に伝えるのは簡単ではありません。
要件定義や設計段階での打ち合わせ、進捗確認の定例会議など、内製と比べて調整にかかる時間と労力は大きくなります。オフショア開発を選択した場合は、言語や文化、時差の違いも考慮が必要です。円滑なプロジェクト進行のためには、窓口担当者を明確にし、コミュニケーションルールを事前に定めておくことが求められます。
想定外のコスト増加リスクがある
スコープが明確でない場合や、開発途中で仕様変更が発生した場合、追加費用が必要となるケースは珍しくありません。特に要件定義が曖昧なままプロジェクトを開始すると、後から「この機能も必要だった」という事態が発生しやすくなります。
想定外の機能追加や修正対応が積み重なり、予算を大幅に超過する事態も起こり得ます。契約前に要件を明確化し、費用の透明性を確保することが重要です。見積もり段階で追加費用が発生する条件を確認し、予備費を含めた予算計画を立てておくと、予算超過のリスクを軽減できます。
システム開発の外注が向いているケース
外注と内製にはそれぞれ特徴があり、自社の状況に応じて最適な方法を選択する必要があります。ここからは、システム開発の外注が向いているケースについて解説します。
- 社内にIT人材・専門知識が不足している
- 短期間で開発を完了させる必要がある
- 自社エンジニアが他プロジェクトで多忙
社内にIT人材・専門知識が不足している
システム開発には、プログラミングだけでなく要件定義や設計、テストなど多岐にわたる専門知識が求められます。加えて、セキュリティ対策やインフラ構築といった周辺領域の知識も必要となるケースが多く、すべてを社内でカバーするのは難しいものです。
これらのスキルをもつ人材を採用・育成するには相当な時間とコストが必要であり、すぐにシステムが必要な場合は外注が現実的な選択です。採用市場での人材ミスマッチを回避できる点も、外注を選ぶ理由となります。まずは外注でシステムを構築し、運用を通じて社内に知見を蓄積していく方法も有効です。
短期間で開発を完了させる必要がある
外注先の開発会社は、確立された開発プロセスやチーム体制をもっており、契約後すぐにプロジェクトを開始できます。社内でチームを編成する場合に比べ、立ち上げまでの時間を大幅に短縮可能です。
複数のエンジニアを同時にアサインすることも可能なため、社内リソースだけでは実現できないスピードでの開発が期待できます。市場投入のタイミングが競争優位に直結するプロジェクトでは、外注による時間短縮が大きな価値をもちます。競合他社に先駆けてサービスをリリースしたい場合や、法改正への対応期限が迫っている場合など、スピードを優先すべき状況では外注が有力な選択肢です。
自社エンジニアが他プロジェクトで多忙
既存システムの保守運用や他の開発案件に追われている状況で、新規プロジェクトを立ち上げるのは現実的に困難です。無理にアサインすれば、既存業務の品質低下やエンジニアの疲弊を招く恐れがあります。
外注を活用すれば、社内エンジニアは現行業務に集中しながら、新規システムの開発を並行して進められます。一時的なリソース不足を補う手段として、外注を戦略的に活用する企業は少なくありません。繁忙期のみ外部リソースを活用し、落ち着いた時期に社内で引き継ぐといった柔軟な対応も可能です。
システム開発の外注費用の目安
システム開発の外注費用は、システムの種類や規模、機能の複雑さによって大きく変動します。費用の大半は人件費が占めており、エンジニアの人月単価と開発期間で算出するのが一般的です。以下は規模別の費用目安となります。
| 規模 | 費用目安 |
| 小規模(簡易アプリ等) | 50万〜300万円 |
| 中規模(業務システム等) | 300万〜1,000万円 |
| 大規模(基幹システム等) | 1,000万円〜 |
これらはあくまで目安であり、実際の費用は要件や外注先によって異なります。正確な費用把握のためには、複数の開発会社から見積もりを取得して比較検討してください。開発費用だけでなく、納品後の保守・運用費用も予算に組み込んでおくことが大切です。
システム開発の外注を成功させるポイント
外注を成功させるには、発注側の積極的な関与が欠かせません。プロジェクトを成功に導くための3つの重要ポイントを紹介します。
- 目的・要件を明確に言語化する
- 丸投げせず定期的なコミュニケーションを図る
- 契約内容と責任範囲を事前に確認する
目的・要件を明確に言語化する
「なぜシステムが必要なのか」「どのような課題を解決したいのか」「実現したい機能は何か」を具体的に整理し、開発会社に伝える必要があります。現状の業務フローや課題を可視化し、システム化によって何を改善したいのかを明文化しておくと、認識のズレを防げます。
要件が曖昧なまま開発を進めると、認識の齟齬が生じ、想定とは異なるシステムが納品されるリスクが高まります。必須要件と希望要件を明確に区別しておけば、予算やスケジュールの調整もスムーズです。RFP(提案依頼書)を作成して複数社に提示すれば、比較検討もしやすくなります。
丸投げせず定期的なコミュニケーションを図る
外注したからといって開発会社に丸投げしてしまうと、期待通りの成果物が得られない可能性があります。週次や隔週での定例会議を設定し、進捗状況や課題、今後の予定を共有する場を設けることが重要です。
問題発生時も早期に発見・対処できるため、スケジュール遅延やコスト増大のリスクを軽減できます。要件定義や設計段階では、発注側も主体的に打ち合わせへ参加しましょう。チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用し、日常的なやり取りをスムーズにする工夫も効果的です。疑問点は早めに確認し、小さな認識のズレを放置しないことが成功への近道となります。
契約内容と責任範囲を事前に確認する
開発範囲や納期、費用に加え、仕様変更時の対応方法、不具合発生時の責任範囲、納品後のサポート体制などを書面で明記しておく必要があります。請負契約と準委任契約では責任の所在が異なるため、契約形態の違いも理解しておきましょう。
口頭での合意事項も含めてすべてを契約書に残すことで、後々のトラブルを防げます。追加費用が発生する条件や納期延長時の取り決め、知的財産権の帰属先なども事前に確認が必要です。契約書のレビューに不安がある場合は、法務担当者や専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
システム開発の外注は、専門技術の即時活用や採用コスト削減といったメリットがある一方、ノウハウが蓄積されにくい、コミュニケーションコストが発生するなどのデメリットも存在します。
外注が向いているのは、社内にIT人材が不足している場合や、短期間での開発が求められる場合、自社エンジニアが多忙な場合などです。費用は規模によって50万円から1,000万円以上まで幅があり、複数社への見積もり相談が有効となります。
成功のためには、目的・要件の明確化、定期的なコミュニケーション、契約内容の事前確認が重要です。自社の状況を把握したうえで、外注を戦略的に活用してプロジェクトを成功に導きましょう。
