企業のDX推進やデジタル化が加速する中、「システム開発」と「ソフトウェア開発」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、両者の違いを正確に説明できる方は意外に少ないのではないでしょうか。
実は、この2つの違いを理解しておくことは、外注先選定や開発プロジェクトの成否を左右する重要なポイントです。
本記事では、システム開発とソフトウェア開発の定義から具体的な違い、外注する際のメリットと成功のポイントまで、体系的に解説します。
開発プロジェクトを検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
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システム開発とソフトウェア開発の定義
まず、システム開発とソフトウェア開発がそれぞれ何を指すのか、正確に理解しておく必要があります。
- システム開発とは何か
- ソフトウェア開発とは何か
システム開発とは何か
システム開発とは、業務全体を支える仕組みを構築するプロセスを指し、ソフトウェアだけでなく、ハードウェア、ネットワーク、データベースなども含む広範囲な開発活動です。
組織の課題解決や業務効率化を目的として、包括的なシステムを設計・構築することが主な役割となります。たとえば、企業の基幹システム(会計システム、販売管理システム、生産管理システムなど)、銀行のATMシステム、コンビニのレジシステムといった、業務プロセス全体に関わる大規模な仕組みがシステム開発の代表例です。
システム開発では、ビジネスプロセスやワークフローの分析から始まり、要件定義、システム設計、実装、テスト、導入、保守・運用といった一連の工程をすべて行う点が特徴的です。単にプログラムを作るだけでなく、組織全体の業務を分析し、最適な仕組みを構築する必要があるため、幅広い知識と経験が求められます。
ソフトウェア開発とは何か
ソフトウェア開発とは、コンピューター上で動作するプログラムやアプリケーションを設計・開発・テストするプロセスです。特定の機能や目的に特化したプログラムを作ることに焦点を当てています。
具体的には、MicrosoftのWordやExcelといったアプリケーションソフト、Google ChromeやGmailといったWebアプリケーション、スマートフォンで利用するLINEといったモバイルアプリなど、私たちが日常的に使用するソフトウェアの開発がこれに該当します。
ソフトウェア開発は、システム開発の一部として行われることもあれば、独立したプロジェクトとして実施されることもある点が特徴です。要件定義、設計、コーディング、テスト、デバッグといったステップで進められ、ユーザーインターフェースやデータ処理など、特定の機能を実現することが目的となります。
システム開発とソフトウェア開発の4つの違い
システム開発とソフトウェア開発は、対象範囲、開発期間、必要なスキル、開発手法など、様々な側面で異なる特徴を持っています。これらの違いを正確に把握することで、プロジェクトに最適なアプローチを選択できるようになります。
- 対象範囲の違い
- 開発期間・プロジェクト規模の違い
- 必要なスキルセットの違い
- 開発手法・アプローチの違い
対象範囲の違い
最も大きな違いは、開発の対象範囲です。システム開発は、ソフトウェア、ハードウェア、ネットワーク、データベースなど、ITシステム全体を構築する広範な活動を指します。一方、ソフトウェア開発は特定のプログラムやアプリケーションの作成に範囲が限定される点が特徴です。
たとえば、在庫管理の仕組みを構築する場合を考えてみましょう。システム開発では、バーコード読み取り機器の選定と設置、サーバー構築、ネットワーク設計、管理ソフトウェアの開発、既存システムとの連携まで、すべてを包括的に扱います。これに対してソフトウェア開発は、在庫管理用のアプリケーションプログラム部分のみを対象とした作業です。
システム開発の方がより広義な意味として使われており、ソフトウェア開発はその一部に含まれるケースが多いです。
開発期間・プロジェクト規模の違い
システム開発は大規模で複雑なプロジェクトになることが多く、開発期間も長期化する傾向があります。大企業の基幹システム刷新には1年以上かかることもあれば、中小企業向け業務システム導入でも数ヶ月から1年程度が一般的です。
対照的に、ソフトウェア開発はプロジェクトの規模や複雑さによって異なるものの、システム開発と比較して短期間で完了する場合が多くなります。スマートフォンアプリ開発やWebサイト制作であれば、数週間から数ヶ月で開発が完了することも珍しくありません。
この期間の違いは、対象範囲の広さと関係しており、システム全体を構築する必要があるシステム開発では、調整や統合の工程が増えるため、必然的に長期化しやすくなります。
必要なスキルセットの違い
求められる専門知識やスキルも、両者で大きく異なる点に注意が必要です。
システム開発では、ハードウェアとソフトウェア両方の理解が求められることが多く、プロジェクト管理能力、ビジネス分析能力、システムアーキテクチャやデータベース設計といった幅広い専門的スキルが必要とされます。システムアーキテクト、プロジェクトマネージャー、SE(システムエンジニア)といった職種が中心的な役割となります。
一方、ソフトウェア開発では、特定のプログラミング言語や開発ツールに特化した専門知識が中心となり、比較的範囲が限定的です。アルゴリズムの設計、データ構造の選択、ソフトウェアテスト、デバッグ、品質保証といった技術分野に焦点を当てたスキルが求められ、フロントエンド開発者、バックエンド開発者、データサイエンティストといった職種が活躍します。
開発手法・アプローチの違い
開発を進める際の手法やアプローチも、両者で異なる傾向が見られます。
システム開発では、SDLC(システム開発ライフサイクル)というフレームワークが使用されることが多く、要件定義、設計、実装、テスト、デプロイメント、メンテナンスという流れで進められます。
BDUF(ビッグデザインアップフロント)、スパイラルモデル、Vモデルといった計画的なアプローチが採用されるケースが一般的です。これは、大規模プロジェクトで要件が明確な場合に適しており、開発の初期段階で全体設計を詳細に行う手法となります。
ソフトウェア開発では、要件が頻繁に変更される可能性があるため、柔軟に対応できる開発手法が好まれます。スクラムやDevOpsといったアジャイル開発手法が一般的で、短いスプリント(通常2〜4週間)で開発を進め、定期的に成果を評価しながら進行する点が特徴です。ユーザーインターフェースやデータ処理が中心となるソフトウェア開発では、こうした柔軟なアプローチが効果を発揮します。
システム・ソフトウェアを自社開発する課題
多くの企業が開発プロジェクトを検討する際、まず自社での開発を考えるかもしれません。しかし、自社開発には様々な課題が存在し、それらを十分に理解したうえで判断する必要があります。
- 専門人材の確保・育成に膨大なコストがかかる
- 技術トレンドへの対応が後手に回る
- 開発リソースが硬直化し柔軟性を欠く
- 品質管理・納期管理の難しさ
- コア業務へのリソース投下が不十分になる
専門人材の確保・育成に膨大なコストがかかる
自社開発を行うためには、優秀なエンジニアを採用し、継続的に育成していく必要があります。しかし、IT人材不足が深刻化している現在、優秀なエンジニアの確保は極めて困難です。
採用コストだけでなく、エンジニアの給与水準も年々上昇しており、人件費の負担は増加の一途をたどっています。さらに、技術の進化が速いIT業界では、継続的な教育投資も欠かせません。新しい技術やツールの習得には時間とコストがかかり、その間も人件費は発生し続ける構造です。
特に中小企業にとって、専門人材を複数名確保し続けることは、経営上の大きな負担となります。
技術トレンドへの対応が後手に回る
IT技術の進化スピードは非常に速く、数年前の最新技術が陳腐化することも珍しくありません。自社の開発チームが特定の技術に特化している場合、新しい技術トレンドへの対応が遅れるリスクがあります。
AI、機械学習、クラウドネイティブ、ブロックチェーンといった先端技術を導入しようとしても、社内に知見がなければ、一から学習する必要が出てきます。その間に競合他社が先行し、市場での優位性を失う可能性も考えられるわけです。
また、レガシーシステムの保守に追われ、新技術への投資が後回しになるという悪循環に陥る企業も少なくありません。
開発リソースが硬直化し柔軟性を欠く
自社開発チームは固定費となるため、プロジェクトの繁閑に応じた柔軟なリソース調整が困難です。大規模プロジェクトで一時的に人手が必要な場合でも、すぐに増員することはできず、逆に開発案件が少ない時期でも人件費は固定的に発生し続けます。
新規事業や実験的なプロジェクトに挑戦したくても、既存システムの保守運用で手一杯というケースは珍しくありません。結果として、事業機会を逃したり、イノベーションが停滞したりする原因となります。
また、特定の技術や領域に偏った開発体制になりやすく、多様な開発ニーズに対応しきれないという課題も生じやすい状況です。
品質管理・納期管理の難しさ
自社開発では、開発メンバー全員が他の業務と兼務していることも多く、開発プロジェクトだけに集中できない環境になりがちです。本業の業務に追われ、開発が後回しになると、品質低下や納期遅延のリスクが高まります。
また、客観的な品質評価が難しく、社内の甘い基準でリリースしてしまい、本番稼働後に重大なバグが発覚するケースもあります。プロジェクト管理の経験が不足している場合、スコープクリープ(要件の際限ない拡大)や、スケジュール管理の甘さといった問題も発生しやすくなるのです。
コア業務へのリソース投下が不十分になる
企業にとって、本来注力すべきはコア業務における競争力の強化です。しかし、システム開発やソフトウェア開発に多くのリソースを割くことで、本業がおろそかになるリスクがあります。
特に非IT企業の場合、開発はあくまで業務効率化の手段であり、目的ではありません。開発プロジェクトに経営資源を集中させすぎると、商品開発、マーケティング、顧客対応といった本来の強みを活かせる領域への投資が不十分になりかねません。
限られた経営資源をどこに配分するかという戦略的判断が、企業の成長を左右するといえます。
システム・ソフトウェア開発を外注する5つのメリット
自社開発の課題を踏まえると、外注という選択肢が持つメリットは非常に大きいものです。外注を活用することで、コスト最適化だけでなく、技術力の向上や事業スピードの加速など、多面的な効果が期待できます。
- 専門技術とノウハウへ即座にアクセスできる
- 開発コストを最適化し変動費化できる
- 最新技術トレンドを迅速に活用できる
- プロジェクトに応じて柔軟にリソース調整できる
- 自社のコア業務に経営資源を集中できる
専門技術とノウハウへ即座にアクセスできる
開発会社は、様々なプロジェクトを経験してきた専門家集団です。外注することで、自社で一から育成する必要なく、豊富な経験と高度な技術を持つエンジニアに即座にアクセスできる点が最大のメリットといえます。
特定の技術領域に精通した専門家や、業界特有の要件に詳しいエンジニアなど、プロジェクトに最適な人材を確保できるわけです。また、過去のプロジェクトで培ったノウハウやベストプラクティスを活用できるため、試行錯誤の時間を大幅に短縮し、高品質な成果物を得られる可能性が高まります。
開発会社が持つ知見やノウハウは、自社で同等のレベルに到達するまでに何年もかかる貴重な資産です。
開発コストを最適化し変動費化できる
外注では、必要な時に必要な分だけ開発リソースを確保できるため、コストを変動費として扱える点が大きなメリットです。自社で正社員を雇用する場合と比較して、採用コスト、教育コスト、福利厚生費といった固定費を削減できます。
プロジェクトベースで契約するため、開発が完了すれば費用も終了し、案件がない時期のコスト負担もありません。また、複数の開発会社に見積もりを依頼することで、競争原理が働き、適正価格での発注が可能になります。
特にスタートアップや中小企業にとって、固定費を抑えながら必要な開発を実現できることは、経営の柔軟性を大きく高める要素です。
最新技術トレンドを迅速に活用できる
開発会社は、ビジネスとして常に最新技術をキャッチアップし続けています。AI、機械学習、クラウドネイティブ、マイクロサービスといった先端技術を、自社で学習コストをかけずに活用できる点は見逃せません。
新しいフレームワークやツールの導入経験も豊富であるため、技術選定の失敗リスクも低減できます。また、技術トレンドの変化に応じて、柔軟に開発手法や使用技術を変更できることも、外注ならではの強みです。
競合に先駆けて新技術を導入し、ビジネス上の優位性を確立したい企業にとって、外注は有力な選択肢となります。
プロジェクトに応じて柔軟にリソース調整できる
外注では、プロジェクトの規模や状況に応じて、開発リソースを柔軟に増減できる点が魅力です。大規模開発で一時的に多くのエンジニアが必要な場合でも、短期間で体制を整えられます。
逆に、保守フェーズに入って必要な人員が減少すれば、コストも適切に縮小可能です。こうした柔軟性は、ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業の競争力を支える重要な要素となります。
また、複数のプロジェクトを同時進行させる場合でも、それぞれに最適な開発会社を選定することで、効率的に推進できるわけです。
自社のコア業務に経営資源を集中できる
開発を外注することで、社内の人的リソースを本来の事業に集中させられます。非IT企業であれば、商品開発、営業活動、顧客サービスといったコア業務に経営資源を振り向けることが可能です。
開発プロジェクトの管理は外部の専門家に任せ、自社は要件定義や検収といった重要な意思決定に注力すればよいため、経営効率が向上します。また、開発の複雑な技術的課題に悩まされることなく、ビジネス成果に焦点を当てた判断ができる点も見逃せません。
限られた経営資源を最も価値を生む領域に配分することが、企業成長の鍵を握るといえます。
外注先選定で失敗しないための5つのポイント
開発の外注には多くのメリットがある一方で、外注先の選定を誤ると、プロジェクトの失敗につながります。適切なパートナーを見極めるために、押さえるべき重要なポイントを整理しましょう。
- 開発実績と専門性を徹底的に確認する
- 開発体制とプロジェクト管理力を見極める
- 円滑なコミュニケーション体制が整っているか
- セキュリティと品質管理の体制
- 長期的なパートナーシップを構築できるか
開発実績と専門性を徹底的に確認する
外注先を選定する際、最も重要なのは過去の開発実績です。自社と同じ業界や類似プロジェクトの経験があるかを確認しましょう。実績が豊富であれば、業界特有の要件や課題を理解しており、スムーズなプロジェクト推進が期待できます。
具体的には、開発したシステムやアプリケーションの事例、プロジェクトの規模、使用技術、成果物の品質などを詳しく確認することが重要です。可能であれば、実際の成果物を見せてもらったり、過去のクライアントからの評価を聞いたりすることで、より正確な判断ができます。
また、自社が求める技術領域での専門性が高いかどうかも、重要な判断基準です。AI開発、モバイルアプリ、基幹システムなど、それぞれに専門性が必要となるため、得意分野とプロジェクトの適合性を見極めましょう。
開発体制とプロジェクト管理力を見極める
開発会社の体制やプロジェクト管理能力も、成否を左右する重要な要素です。どのような役割分担でプロジェクトを進めるのか、プロジェクトマネージャーの経験値はどの程度か、といった点を確認する必要があります。
特に重要なのは、進捗管理、課題管理、リスク管理といったプロジェクト管理プロセスがしっかり確立されているかという点です。定期的な報告会議の設定、課題発生時のエスカレーションルート、品質担保のためのレビュー体制なども確認しましょう。
また、開発メンバーのスキルレベルや経験年数、チーム構成なども重要な判断材料となります。プロジェクトの途中でメンバーが頻繁に入れ替わるような体制では、品質低下やスケジュール遅延のリスクが高まるため注意が必要です。
円滑なコミュニケーション体制が整っているか
開発プロジェクトの成功には、発注側と開発側の密なコミュニケーションが不可欠です。レスポンスの速さ、質問への回答の的確さ、提案力といったコミュニケーション能力を、選定段階で見極めましょう。
提案依頼や見積もり依頼の段階での対応スピードや質は、実際のプロジェクト進行時の姿勢を反映している場合が多いものです。また、専門用語ばかりで説明するのではなく、ビジネス視点でわかりやすく説明できるかどうかも重要なポイントとなります。
さらに、定期的な打ち合わせの頻度、使用するコミュニケーションツール(Slack、Teams、Zoomなど)、ドキュメント共有の方法なども確認しておくことで、スムーズな協業が実現します。
セキュリティと品質管理の体制
開発プロジェクトでは、機密情報や個人情報を扱うケースも多いため、セキュリティ体制の確認が欠かせません。情報セキュリティに関する認証(ISO27001、プライバシーマークなど)を取得しているか、秘密保持契約(NDA)の締結は適切に行われるかといった点をチェックしましょう。
また、品質管理体制も重要な確認ポイントです。コードレビューの実施、テスト工程の充実度、バグ管理の方法、品質基準の明確さなどを確認することで、高品質な成果物を期待できるかどうかが判断できます。
特に基幹システムや顧客データを扱うシステムの開発では、セキュリティと品質の両面で高い水準が求められるため、妥協せずに確認する姿勢が大切です。
長期的なパートナーシップを構築できるか
システムやソフトウェアは、開発して終わりではなく、運用・保守フェーズが長く続くものです。そのため、一度きりの取引ではなく、長期的なパートナーシップを構築できる相手かどうかを見極めることが重要となります。
開発後の保守運用サポート体制、追加開発や機能改善への対応力、技術的な相談への対応姿勢などを確認しましょう。また、企業としての安定性や継続性も判断材料です。数年後にも事業を継続しているか、技術者の定着率は高いかといった点も、可能な範囲で確認すると良いでしょう。
信頼関係を築ける相手と長期的に協業することで、自社のビジネスを深く理解してもらえ、より質の高い提案や開発が期待できます。
まとめ
システム開発とソフトウェア開発の違いは、対象範囲の広さにあります。システム開発はハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク全体を含む包括的な開発であり、ソフトウェア開発は特定のプログラムやアプリケーションに特化した開発です。
自社開発には、専門人材の確保・育成コスト、技術トレンドへの対応遅れ、リソースの硬直化といった多くの課題が存在します。
一方、外注を活用することで、専門技術への即座のアクセス、コストの変動費化、最新技術の迅速な活用、柔軟なリソース調整、コア業務への集中といった多面的なメリットが得られます。
自社のニーズを正確に把握し、システム開発とソフトウェア開発のどちらが適しているかを見極めたうえで、信頼できるパートナーを選定することが、プロジェクト成功への第一歩となります。
